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馬毛島、基地建設のための環境アセスについて

『馬毛島基地(仮称)建設事業に係る環境影響評価方法書』について、意見書提出期限が迫っています。

【4月1日(木)まで。】

▶『方法書』ダウンロード

▶『方法書のあらまし』ダウンロード

「意見書」の提出先:

①郵送又はFAX

〒862-0901 熊本市東区東町1-1-11

熊本防衛支局 建設計画官付

TEL:096-368-2173

FAX:096-368-6970

(土曜日、日曜日、祝日を除き午前9時から午後5時まで)

②電子メール

ks-km-tyoutatsu@kyusyu.rdb.mod.go.jp

 

※1概況調査では78種のサンゴ類が確認されましたが、重要な種は確認されませんでした

(『馬毛島基地(仮称)建設事業に係る環境影響評価方法書あらまし』熊本防衛支局、p5より)

 

※2なお、対象事業実施区域の内外外周道路を整備する計画ですが、当該外周道路は、島内の警備や崖崩れ等の保守点検など、島内の大規模な国有地を良好な状態で維持・保存し、適正な方法で管理することを目的としており、本事業と目的を異にし、かつ、構想及び決定の時期も異なることから、本事業の対象としていません

(『馬毛島基地(仮称)建設事業に係る環境影響評価方法書』熊本防衛支局、「2.2.2 対象事業実施区域の位置」より)

 

※3訓練施設については、今後の検討を踏まえて計画しますが、現時点においては可能な限り自然環境を維持することとしています

(同、「2.2.5(2)(f) 訓練施設」)

 

※4重要な種の保護の観点から、確認位置については表示しておりません

(同、「3.1.5(1) 図3-1-17(他)重要な動物種(鳥類/爬虫類/両生類/魚類/昆虫類/陸産貝類/淡水・汽水産貝類/その他水生生物/オカヤドカリ類)確認位置図」「重要な植物確認位置図」「ウミガメ類の産卵適地及び上陸確認位置」「重要な植物種(海藻草類)確認位置図」)

 

※5なお、対象事業実施区域(馬毛島)においては、人と自然との触れ合いの活動の場は確認されていません。

(同、「3.1.6(2) 人と自然との触れ合い活動の場」より)

 

※6調査及び予測の結果並びに環境保全措置を検討した場合においてはその結果を踏まえ、対象事業の実施により選定項目に係る環境要素に及ぶおそれがある影響が、実行可能な範囲でできる限り回避され、又は低減されており、必要に応じその他の方法により環境の保全についての配慮が適正になされているかについて評価します。(…略…)選定した評価の手法を表-4.3.1に示します

(同、「4.3 評価の手法の選定」より)

 

※7予測結果(…略…)及び環境保全措置の検討結果等を踏まえ、環境要素に及ぶおそれがある影響が、実行可能な範囲内でできる限り回避され、又は低減されており、必要に応じその他の方法により環境の保全についての配慮が適正になされているかどうかについて評価します

(同、「4.3 表-4.3.1(2) 評価の手法」より「動物」の場合 他)

 

 

 1980年4月21日、馬毛島は無人島となった。馬毛島の99%が企業に買収された。日本版スペースシャトルの着陸場、使用済み核燃料の中間貯蔵施設、国際貨物空港、普天間飛行場の移設、等々…、様々な計画が浮上しては消えた。何ひとつ実現しなかったが、馬毛島は無軌道な乱開発・違法開発に晒された。

 乱開発・違法開発に対し、種子島などの住民たちはたたかってきた。「馬毛島の自然を守る会」は、2001年の採石工事による土砂流出問題で裁判を始め、以来今日まで裁判運動を続けてきた。

 

島民による一連の訴訟は、馬毛島の自然と共生してきた地域住民の叫びであり、先人から受け継いだ歴史と文化、そして現金収入の少ない島での生活を賭けた争いでもあった。

『馬毛島、宝の島ー豊かな自然、歴史と乱開発ー』馬毛島環境問題対策編集委員会編著、南方新社 より)

 

 もしもこのまま国による基地建設が始まったら、馬毛島を所有した企業の無法な行いは、検証される機会も無くなり闇に葬られることになる。住民によるたたかいの積み重ねも、台無しにされてしまう。

 国は、違法開発された土地を買った。もしそのままそこに基地を造るとしたら、それは違法開発に便乗する行為であり、違法開発の共犯者になるということだ。違法開発された状態のまま、アセスを開始するなど許されない。基地建設のためではなく「島内の大規模な国有地を良好な状態で維持・保存し、適正な方法で管理する」(!?)ために、基地計画地の「内外」に外周道路を整備するそうだが(※2)、違法開発された土地を買った以上、国がなすべきことは「維持・保存」だけでは足りない。まず、馬毛島の自然を20年前の状態に回復させること、少なくともその努力をすることだ。基地計画など、その後の話だ。基地建設を前提としたアセス手続の強行を許してはならない。

 


 

 

環境アセスの手続と、今回の馬毛島アセスの「方法書」について

 

環境アセスメントは、事業者が中心となって、環境保全の観点からよりよい事業計画を考えていく仕組みです。(環境省パンフレットより)

 

 環境アセスでは、事業の実施区域と、事業の影響を受けると考えられる周辺地域について、予測・評価に必要な環境情報を収集するために、自然状況や社会状況を調査し、事業の実施(工事の実施や、施設の存在、施設の運用)による環境の変化を予測し、事業の実施による環境への影響について、実行可能な最大限の対策がとられているか、環境保全に関する基準・目標等を達成しているか評価を行う。

 この具体的な方法を確定するに当たって、一般の人々や、地方公共団体などの意見を聴く手続が設けられている。事業者は、どのような項目についてどのような方法で調査・予測・評価をしていくのか計画を示す「環境影響評価方法書(調査・予測・評価の手法を記したもの)を作成し、都道府県知事、市町村長に送付する。また、ウェブサイトなどで1ヶ月間誰でも見られるようにし(縦覧)、説明会を開催する。環境保全の見地から意見のある人は、誰でも意見書を提出することができる。

 

▲熊本防衛支局『…方法書のあらまし』P6

▲環境省パンフレットより

 

 島をまるごと軍事基地に造り変えれば、島の自然・環境がまるごと破壊されるのは、誰の目にも明白である。国(防衛局)がアセスを行う唯一の理由は、それ が「仮称馬毛島基地」を造るために避けて通れないプロセスだから、と思われる(石垣島着工までは避けて通ってきた)。環境への配慮は、あくまで基地計画の実現を 前提に、「実行可能な範囲内」(※7)で行うものに過ぎない。しかし、このような「島まるごと」の計画において、どのような配慮・保全が「実行可能」なのか?

 

 

 方法書の『あらまし』に「78種のサンゴ類が確認されましたが、重要な種は確認されませんでした」(※1)と書いてある。「重要な種」とは何か。重要でない種があるのか。辺野古のサンゴ移植を思い起こさせる。「重要」とされる希少種・絶滅危惧種のいくつかを捕獲・採集し、別の場所に移動・保護し、それが上手くいったとしても、それは生態系の保全とは関係ないことだ。

 

 防衛局はすでに、左表のように馬毛島の動植物について概況調査を行っている。

 たとえば鳥類では23科39種、そのうちヨシゴイ、ヒクイナ、シロチドリ、メダイチドリ、ツバメチドリ、ベニアジサシ、ミサゴ、ハヤブサ、の8種の「重要な種」が確認されたという。爬虫類は5科5種、そのうち「重要な種」はニホンイシガメ、アオダイショウ、ニホンマムシの3種。両生類は2科2種、そのうち「重要な種」はニホンアマガエル、ニホンアカガエルの2種。魚類は4科7種、「重要な種」はミナミメダカ1種、昆虫類・クモ類は16科33種で「重要な種」はハラビロトンボ、チョウトンボ、アマミウラナミシジミ、オオミズスマシ、ムツボシツヤコツブゲンゴロウの6種。陸産貝類は17科32種、「重要な種」はアズキガイ、ヘソカドガイ属、チャイロマイマイなど25種。淡水・汽水産貝類では3科3種、「重要な種」はカワニナ1種。その他水生生物は、4科9種、「重要な種」はヤマトヌマエビ、ベンケイガニの2種。オカヤドカリ類は1科2種、ムラサキオカヤドカリ、ナキオカヤドカリの2種は国指定の天然記念物。など…。

 

 (調査により)これらの数多く確認された「重要な種」について、(予測される)対象事業の実施による影響が、「環境保全措置を検討した場合においてはその結果を踏まえ」、「実行可能な範囲でできる限り回避され、又は低減されており、必要に応じその他の方法により環境の保全についての配慮が適正になされているか(方法書※6評価の手法の選定)評価される。その選定された評価の「手法」は、実行可能な範囲でできる限り回避され、又は低減されており、必要に応じその他の方法により環境の保全についての配慮が適正になされているかについて評価します(方法書※7評価の手法)と、動植物に限らず全ての項目において同文が反復されている。これが手法?…意味がよく分からないが、つまり、「評価の手法」について、具体的には何も書かれていない。そしていちばん肝心な「環境保全措置」を、どのような考え方で、どのように検討するのか、何も書かれていない。環境というものについて事業者がどう考えているのか、ということさえ分からない。

 

 「重要な種の保護の観点から、確認位置については表示しておりません。」(方法書※4)

 

「重要な動植物種」の確認位置を示す地図は、すべて白塗りされている。「保護の観点」といっても、馬毛島は現在、誰でも簡単に入れるような島ではない。

 確認位置を公開すれば、誰でも「◯◯が生息する場所は滑走路の下敷きになる」などと予測することができる。そういうことは避けたいという観点から、確認位置を表示していないのだろう。いずれにしても、方法書に記載されて膨大な動植物種のリストは、殺戮される種のリストであると解釈するしかないのだろうか。

 

(追記:3月27日、「やめろ!敵基地攻撃/大軍拡 馬毛島に基地をつくるな!3.27集会」に参加。そこで、屋久島在住でマゲシカに詳しい方の発言があった。

 

マゲシカは馬毛島にいる状態で守らないと保護にならない〈馬毛島に棲むニホンジカ〉という。2000年頃約570頭いたが、2011年には約290頭まで減った。これ以上手を出せば守りようがない。アセスをしようがしまいが、この施設を造ればマゲシカは絶滅する、と…。)

 

◀保安林の場所(『方法書』)

保安林以外の場所をすべて基地計画地(事業実施区域)にした、ということ。


 

【参考】「予測の手法」(『方法書』)▼

 


 

【参考】「評価の手法」(『方法書』)▼

 


 

【参考】「意見書」の書式例

 


 

【参考】『方法書のあらまし』

 

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