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「国境離島」と「離島機能」

「国境離島」と「離島機能」

土地規制法の「基本方針案」に対するパブコメを送ろう! 8月24日(水)まで。

 


 土地規制法(「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」政府の略称は「重要土地等調査法」2021616日成立)第四条【政府は、重要施設の施設機能及び国境離島等の離島機能を阻害する土地等の利用の防止に関する基本的な方針を定めなければならない。】に基づき、「重要施設の施設機能及び国境離島等の離島機能を阻害する土地等の利用の防止に関する基本的な方針」の「案」(以下、「基本方針案」)が、714日公表されました。

 この「基本方針案」と「施行令案(政令案)」、「施行規則案(内閣府令案)」に対する意見(パブリックコメント)募集が7月26日から政府により行われています。

 

参考

▶「土地規制法廃止アクション事務局」のHP「~土地規制法の基本方針案にみんなでパブコメを送ろう~」

 

基本方針案

 

意見募集について

 

▶受付締切日時は、2022年8月24日(水)23時59分


※(以下、当ブログ20216月更新の▶「重要土地調査規制法案と有人国境離島法」と内容的に重複があります。

 

 

当たりまえのように、小さな島じまが「国境離島」と呼ばれ、

当たりまえのように、「離島機能」が押しつけられる。これこそが、許し難いことだ。

 

 

 「国境離島」と「離島機能」。「土地規制法」にも、その「基本方針案」にも、くり返し出てくる言葉。

 

 「重要施設の施設機能」「国境離島等の離島機能」「阻害」する土地等の利用を防止するために、「基本方針」を定め、「注視区域」「特別注視区域」を指定し、その土地の利用状況の「調査」や利用の「規制」を行い、特別注視区域内の土地に関する「契約の届出等の措置」についても定める。それをもって「国民生活の基盤の維持」「我が国の領海等の保全及び安全保障」に寄与することが「土地規制法」の目的だとされる。

 それでは「国境離島」「離島機能」とは何か。「土地規制法」は以下のように定めている。

 

 

第二条

3 この法律において「国境離島等」とは、次に掲げる離島をいう。

 一 領海及び接続水域に関する法律(昭和五十二年法律第三十号)第一条第一項の海域の限界を画する基礎となる基線(同法第二条第一項に規定する基線をいい、同項の直線基線の基点を含む。)を有する離島

 二 前号に掲げるもののほか、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に

  関する特別措置法(平成二十八年法律第三十三号)第二条第一項に規定する有人国境離島地域を構成する

  離島(第五項第二号において「有人国境離島地域離島」という。)

 

5 この法律において「離島機能」とは、次に掲げる機能をいう。

 一 第三項第一号に掲げる離島の領海及び接続水域に関する法律第一条第一項の海域又は排他的経済水域及び大陸棚に関する法律第一条第二項の海域若しくは同法第二条第一号の海域の限界を画する基礎としての機能

 二 有人国境離島地域離島の領海等の保全に関する活動の拠点としての機能

 

 それでは、「有人国境離島地域離島の領海等の保全に関する活動の拠点」とは何か。

 

 「土地規制法」は、上の第二条5などの機能が「阻害」されることを防ぐために「規制」を行うものだが、こうした機能を「保全・維持」するための法律…つまり「土地規制法」と補完関係にある法律が、2016年4月に成立している。「有人国境離島法」(「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」2017年4月に政府方針決定・施行/上の第二条3の二にも…)という。

 

 148の島を対象とするこの「有人国境離島法」では、「離島振興」と「安全保障政策/戦争態勢づくり」があからさまに一体となっている。

 

 

第一条(目的) この法律は、我が国の領海、排他的経済水域等を適切に管理する必要性が増大していることに鑑み、有人国境離島地域が有する我が国の領海、排他的経済水域等 の保全等に関する活動の拠点としての機能を維持するため、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別の措置を講じ、もって我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に寄与することを目的とする。

 

 

 「有人国境離島法」に基づく施策は、「保全」に関するものと「維持」に関するものに大別される。

 

 「地域社会の維持に関する施策」として、「航路・航空路運賃の低廉化」「ガソリン流通コストへの支援」「農林水産業の再生」「滞在型観光の促進」…などなどの取組みが行われてきた。

 

 一方で「保全に関する施策」として行われてきたのは(※下図参照)防衛省による琉球弧の島々などへの自衛隊新基地建設や部隊配備、レーダー等の整備。海上保安庁による宮古島や石垣島や小笠原などの海保の強化。国土交通省による土地の買取りや借り上げや、島々の港湾・道路・空港等の整備。内閣府・防衛省による「防衛施設周辺等」の土地所有状況の調査。防衛省自衛隊・海上保安庁・警察庁・地方公共団体が連携した「合同防災訓練」の実施。など。

 

 

 このようにしてつくられているもの、それはつまり…

 

 

…南西諸島内の民間空港を有事において自衛隊と米軍が展開地として活用するため、滑走路の補強、駐機場の増設、燃料、整備用資・器材などの事前集積、弾薬庫の整備、管理要員の常駐などを進める。この際、沖縄本島、奄美大島,宮古島、石垣島、与那国島及び南大東島などの空港を重視する。また、南西諸島内に多い小規模港湾を改修し、中型船舶の入港を可能にする。(中略)更に、陸路での島内の移動を容易にするため、道路の拡幅、路面や橋梁の強化などを進めるとともに、トンネルを利用した待避所、倉庫などを整備する。加えて、電気、水道、ガス、通信、医療等のライフライン関連施設についても、破壊された場合の予備手段を整備する。なお、これらの整備は政府・自治体の国土強靭化施策と連携して実施する。

『南西諸島防衛に関する提言』「9.防衛インフラや事前集積を整備し、長期持久を可能にする」20197 列島線防衛研究会、より

 

…この提言でも示されているようなものだ。軍事利用のために最適化された島々。基地建設や部隊配備のみならず、総合的につくり変えられていく島々。戦場となることも視野に入れた最前線基地に仕立て上げられようとしている島々。それが「有人国境離島地域離島の領海等の保全に関する活動の拠点」であり、その「離島機能」の「阻害」を防止するのが「土地規制法」の目的であるのだから、当然のことながら、この法律が「規制」したいのは、基地に反対する人びと、軍隊の活動による被害を訴える人びと、戦争に反対し平和を訴える人びと、軍事に協力しない人びと、自分たちの大切な島を守り未来につなげようとする人びとの自由な活動も含まれる、ということになるだろう。

 

 「土地規制法」は廃止されるべきだ。少なくとも、少しでも無害なものにしていかなければならない。「基本方針案」には、あからさまに「市民弾圧が目的」などとはもちろん書いていないが、抜け道はいくらでも用意されている。

  たとえば「機能阻害行為」という、この法律を運用するうえで最も基本的・根本的な概念についてさえ、法律に明確に規定されておらず、今回の「基本方針案」では、わずか7通りの「機能阻害行為の類型」と、5通りの「機能阻害行為に該当するとは考えられない行為」が「例示」されているだけで、「内閣総理大臣は、実際に勧告及び命令を行うか否かについて、個別具体的な事情に応じ、適切に判断する」となっている。これでは、いかようにも運用できてしまう。

 もともと、“詳細は別途基本方針で定めます”という法律で、「基本方針」制定には国会での審議・議決もしないというシロモノ。そうして示された「基本方針案」が、こんなにもあいまいなものになっている。

 

こうした抜け道を塞ぐためにも、ぜひパブコメを!

 

 

 当たりまえのように、小さな島じまが「国境離島」と呼ばれ、当たりまえのように、「離島機能」が押しつけられている。

 

 ある特定の土地の「機能」を定め、「土地の利用を規制する」とはどういうことなのか、もう一度考えたい。人が生まれたり生きたり死んだりするのは土地の上でのことなのだから、それはたいへんなことだ。

 

 誰も好んで基地のそばに暮らしているのではない。

 琉球弧の島じまでは、到底納得など出来ない理由で、力ずくで、自然が壊され、人びとの大切な場所が蹂躙され、集落のすぐそばにミサイル基地が造られたり、枕元にミサイルを置かれたりしている。

 

 基地のまわりの土地は、住民たちの土地であり、住民たちが島を取り戻すためのぎりぎりの抵抗を行う場所である。その場所に対して、軍の論理による理不尽な規制をかけることを、決して許してはならない。

 

 

 

(注:ここでは「土地規制法」について、「国境離島」とされるものに関して書きましたが、日本全国の「重要施設」周辺が調査・規制の対象となります。)


 

▶【基本方針案の問題点解説】「土地規制法廃止アクション事務局の仲松正人弁護士が基本方針案の問題点を詳しく解説しています。基本方針案だけでなく、土地規制法そのものの問題点がよくわかります。パブコメを書くためのみならず、土地規制法の問題を理解していただくために多いに参考になりますので是非ご一読ください。(「土地規制法廃止アクション事務局」HPより)」

 


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